やさしさ探検No.3
 
 これは、前の「友の死」の続きの話です。
友人の告別式のとき、私はどうしても見送りに行きたく、上司にお願いにあがったが、「旦那に騙されるかも」と言う理由で、許可をもらえなかった。
 その様子を見ていた先輩のFさんが、上司に掛け合ってくれた。
そのFさんというのは、いつも、誰にでもやさしく、嫌みを言われても、いつもにこにこしてて、正直、私は(この人は人に嫌われるのが嫌でいっつも人にいいように使われるお人好しなんだ)と見くびっていたところがあったので、ちょっとびっくりした。
一番、嫌われたくないだろう上司に、新米のペーペーのために身体張って説得してくれ、「一緒に行くから」と、とうとう相手を納得させてくれた。
 私は何が何だか狐につままれた気分で、葬儀場に向かうと、その門の前でFさんは、「私はここで待ってるから、行ってきなさい。」ポンと背中を押してくれた。
と、急に背中が熱くなり、またまた目頭に涙がいっぱいたまってきた。Fさんは、私の背中と一緒に友人の背中も押してくれ、二人の距離を縮めてくれたのだ。
 葬儀場には、知らない人だらけだったが、わずか19歳で他界した少女のために、たくさんの人が泣いてくれた。そして、横たわる彼女に、「成人式の為に作った振り袖がかけられ、その赤がとても眩しく、目が離せなかった。

 今にして思えば、彼女もいろいろ辛かったに違いない。友人の勤めてる病院の入院費を滞納して、平気な訳が無い。
そして、どんな思いでわたしの愚痴を聞いてくれてたんだろう。
彼女からみれば、私はあまりにも恵まれてる。健康な身体に両親も揃っていて、無事高校も卒業し、社会人として歩いている私を妬ましいと思ったかもしれない。「贅沢だ」と吐き捨てたい気持ちもあったかもしれない。
そんな事にも気付いてやれず、「友達です」とよく言えたものだと、自分の不甲斐なさに腹が立つ。

 現在は、いつか空の上で、彼女とお酒を飲みながら、「あんなこともあったねぇ〜」と思い出話をすることが、秘かな夢である。

 そして、Fさんがしてくれたように、私もいつか、誰かの肩を「ポン」と押してあげる日がくることを願って・・・・・。

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